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  ディスカウント福助その後

「へぇ、これが例の防犯福助かぁ。」
はにわの家に遊びに来た友だちが、 いつもよく話題に出ていた防犯福助を見ていた。
「うん、ふだんは静かにおじぎをしてるんだ。でもね、この間なんか、テレビですごく面白い映画を放映てたから見入っていんだけど、ちょうど盛り上がって目がはなせないとき、ぴん ぽーんとチャイムがなったんだ。でも、一番いいところで目が離せないから居留守使っちゃえ! と思って、チャイムの音を無視してテレビに熱中してたんだけど、この防犯福助のやつがさぁ。」

防犯福助は、はにわがテレビに熱中するのを邪魔するかのごとく、防犯福助は大きな声で、
「お客さんですよ! 早くでないと!早くぅ!居留守なんか 使っちゃだめですよ!早く、早く!お客さんに失礼でしょ!」
と、テレビの音が聞こえなくなるくらい、大きな声で叫ぶので、はにわはとてもテレビに集中できなかったらしい。ちっと思い、仕方なく応対に出たのだった。
「そんなことが何度もあったんだ。防犯福助なんだから、防犯だけしてればいいのに、おせっかいばっかりでさぁ・・・。でも、自分にも非があるし、ちゃんとお気に入りの壷も守っててくれるんだから、いいだけどね。」
「へぇ。正義感が強そうで、いい防犯福助だね。」

「うん、そうなんだ。この間も、夜中、泥棒がはいったみたいだけど、防犯福助が騒いでくれて、事無きを得たんだ。」
「へぇ、これがそのきみの大のお気に入りの壷かぁ。確かに、なかなかいい壷だね。」
「うん。あ、今、お茶いれるね。」
はにわはお茶を入れに台所にいった。

その間、はにわの友達は、しみじみとはにわのお気に入りの壷を見入っていて、何気なく手にとっ た。
「うん、手触りもいいし、このずっしりくる重さもなかなかいいね。」

はにわの友達は、壷を元の位置に戻そうとしたとき、はっとバランスを崩して、壷を壁に打ち付けてしまい、がん!と鈍い音がしたとき、ふと、壷の口の部分からひびわれがはいってしまったことに気づいた。はにわの友達はあせってきょろきょろした。はにわは、コーヒーをいれるのに熱中で、この事態にはまったく気づいていない。

目立たないひびだけど、でも、お気に入りの壷にひびが入っているなんて、 本人も気づかない方が幸せだよね・・・。そう思ってこっそり戻ろうとしたとき、顔をあげている防犯福助と目が会い、どきっとした。しばらく見詰め合い、防犯福助は、にやっと笑って、「かつ丼」といってまた頭を下げ、おじぎ状態に戻った。はにわの友だちは、焦りまくった。

翌日、はにわの友だちがまたやって来た。
「いらっしゃい、あれ、それ何ぃ? 手みやげに、かつ丼なの?変わった手みやげだね。でも、ちょうどお腹すいたところだったんだ。」
お気に入りの壷にひびがはいったことを知らないはにわは、丁寧に友だちを部屋に招き入れた。友だちは、はにわが見ていないすきを狙って、 防犯福助の前に、余分にもってきたかつ丼を置き、そそくさと何ごともなかったように、はにわとかつ丼を食べながら談笑した。

「じゃ、そろそろ帰るね。」
はにわの友だちは、帰り支度を始めた。
「あ、そこまで送ってくよ。」
はにわと一緒に外へ出ようとしたとき、はにわは、防犯福助の前に、からっぽになったどんぶりを見つけた。
「あれ?なんで、こんなところにどんぶりがあるんだろ?さっき、片付けなかったっけ?」
「・・・あ、いや、さっき、邪魔だったからこっちにおかせてもらったんだ・・・。」
はにわの友だちはあたふたしながら、どんぶりを自分の荷物にしまった。
「あ、そうだっけ?」
はにわは、あっけらかんと納得し、友だちはほっとした。

「あ、そうだ、ちょっと待って。親戚から、明太子をいっぱいもらったから、持ってってよ。」
はにわは、明太子をとりに、部屋の奥へと引っ込んだ。そのとき、防犯福助が、そっと顔をあげた。はにわの友達は、 口にいっぱい御飯つぶをくっつけた防犯福助と目があった。すると、防犯福助は
「鰻丼。」
と一言だけ入って、顔を下げた。
はにわは、うわぁぁ!と冷や汗をたらしていると、明太子を持ってきたはにわがやってきた。
「どうしたの?防犯福助を見ながら、 なにを焦っているの?」
「あ、いや、なんでもない・・・。」
防犯福助は、一切顔をあげず、涼しくおじぎをしているのだった・・・。