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  割り勘

カエルはよく友だちと飲みに出かける。気の会う仲間と、楽しいひととき、といいたいところだが、カエルは文句がある。それは、友人たちが酒豪で、いつも割り勘負けしていることだった。

カエルは、ある時、話のついでに、友人に割り勘についての疑問を話してみた。
「え?だって、飲み会ってそういうもんでしょ? 細かい勘定をいちいちしてたら、かなわないじゃん。 ま、いいじゃん、楽しんだからさ。」
カエルは、うーむと納得せざるを得なかった。

ある日のことだった。カエルは新聞の折り込み広告を見ていると、 気になる広告が目にはいった。
「なになに、割り勘に泣いてるあなたに朗報だって? 当居酒屋では、だれが何杯のんだか、誰がいっぱい食べたかをしっかり記録。 真の平等はここにあり!だって。へぇ。」
カエルは、興味を感じ、早速、次の飲み会は、この居酒屋と決めた 。

 

「しっかしまぁ、おまえもよくこんな店見つけたなぁ。 もはや、執念だな。はっはっはっ。」
カエルの友だちは、居酒屋で席につくと、楽しげに話した。
「お、ビールが全員分きたな。おっと、料金メータがちゃんと加算されてる! ジョッキになにやら磁気みたいなものがついてるから、それで判断してるのかなぁ。」
この居酒屋は、各人の席に料金メータが表示されており、 どうやらビールなどの飲み物が席に運ばれると、加算されるようだ。

「あ、ビール、もう1杯!ここのビールはよく冷えてうめぇ。」
あいかわらず酒豪の友人は、どんどんビールを空けていく。そして、友人の料金メーターは、どんどん加算されていく。カエルは、加算されるメーターを見つめ、やっぱこうじゃなくっちゃね、と大満足だった。

あまりお酒を飲まないカエルだが、結構食べ物にはうるさい。カエルは、すぐそばにあった食べ物のメニューを見た。
「あ、おいしそう、このウニの刺身。ちょっと値段も高いけど、とれたて新鮮、おいしさ保証付き、だって。うっわぁ、食べたいなぁ。ねぇねぇ、これ、頼んでいい?」
「お、うまそうだなぁ。頼んじゃえ。」
みんなの同意を得て、カエルは喜んでウニの刺身を頼んだ。
しばらくすると、ダイコンのツマのうえにちょこんとのっかった大粒のウニが出てきた。
「お、大粒でうまそうなウニだな。いただき!」
「ほんとだ、おれも!」
ウニが運ばれるやいなや、ほろ酔い気分の友だちたちは、遠慮なく、ウニをかっさらっていた。 カエルは遅れをとってしまい、あっという間にウニがなくなり、ダイコンのツマだけ残された。
食いっぱぐれて悲しそうな顔をしているカエルに気付いた友だちはいった。
「ま、いいじゃん、食べた分だけ自分のメーターに加算されるんだからさ。」
カエルは、友だちのメーターにウニ代が加算されていくだけなので、ま、いっか、自分を無理矢理納得させた。ウニをかっさらわれた後に残ったのは、こんもりと盛られたツマのダイコンだけだった。
それにしても、ウニの量をごまかすように、ツマのダイコンがこんもりもってあるなぁ、と重いながら、 カエルは、ツマのダイコンをたっぷりとって口にふくんだ瞬間、おどろいた。
「あ!今、料金メーターがどーんとあがった!ツマしか食べてないのに!たかだかツマだよ!」
...どうやら、この料金メーター、重さだけで判断しているようで、何をとったかに関係なく、重さ分に相当する料金が加算されていく仕組みのようだった。
「なんだよぉ、ひどいよぉ。たかだかダイコンなのに、こんな高いわけないよぉ・・・。」
ということで、カエルは、ウニを食べてないのに、他の人より料金メータがぼんぼん加算されてしまった。 そんなことにショックを受けているカエルに気付かずに、友だちたちは、ビールを飲みながら、御機嫌に酔っぱらって談笑していた。

なんとなく落ち込んでいるカエルに気付き、話の話題作りにと、ある友だちが、カエルの料金メーターを何気に覗き込んだ。
「あれ、おまえ、あまり飲んでないのに、料金メータが一番増えてるんじゃないの。なんだかんだいて、いっぱい食ってるんだなぁ。おれたちが飲んでいる間に食うもんはちゃんと食ってたのか。おまえ、結構グルメだもんなぁ。飲まなくったって、結構金かかるやつなんだなぁ。さすがだね、はっはっはっ。」
カエルは、対して高いものを飲み食いしていないのに、すごく悔しかった。 カエルは次回来たときは、お皿の中の高いものにしか箸をつけないぞ!と心にきめた。

... 以後、その居酒屋は、席を入れ代わった時にすでに正確でなくなる、など、いろんな問題が指摘され、結局普通の居酒屋になったらしい。 カエルはまた今日も、友だちとの楽しいひとときをすごしながら、いつものように割り勘負けをしているようだ。