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はにわの喧嘩
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ある冬の寒い日の、はにわとお役立ち人形の物語である。
「わぁ!今度は宝くじがあたっちゃったぁ。」
「えええ、またぁ?こないだは競馬で万馬券あてたし、ほんとにいつもギャンブル運がいいなぁ。うらやましいや。」
当たり宝くじをひらひらさせて喜ぶお役立ち人形に、この頃さっぱりなはにわはちょっと嫉妬を感じた。
「あっ、そろそろ水戸黄門が始まる!見なきゃ。」
お役立ち人形は大の時代劇ファンで、時代劇のどんなお決まりの結末にでも涙するめでたいやつなのだ。
「だめだよ、今日は歌番組で大好きな歌手が出るんだから!」
はにわは歌番組が大好きで、そのため、仲の良い彼らといえど、チャンネルの取り合いは日常茶飯事で、いつもどちらかが折れて仲良く解決していたのだった。
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しかし、今日はどうもそうすんなりとはいかなかった。ここんとこ何をやってもうまくいなかいはにわは、運のいいお役立ち人形が気にいらなかったのだ。
「時代劇なんて、録画して後でみればいいじゃないか!どうせお決まりのパターンしかやらないんだし。よくそんなわかりきったストーリーに涙できるもんだね!めでたいやつ!」
はにわがそういうと、お役立ち人形はかちんときた。
「この間はぼくが妥協して録画で我慢したじゃない!歌番組こそ録画で十分だよ!いつもCDで聞いている歌なんだから、今見なくても録画でいいじゃない!」
お役立ち人形ははにわに言い返した。
「なんだよ!ちょっとギャンブル運がいいからって、いい気になるなよ!」
はにわは、ついつい言ってしまった。 お役立ち人形は、その言葉を聞いて、いつもの冷静さを失い、激しい言い合いを始めてしまった。
「そんなこといわれたって当たっちゃうものは仕方ないじゃない!ひがまないでよ!」
お役立ち人形のその一言に、はにわはぶちきれた。
「な、な、なんだとぉ?うるさーい!おまえなんか、出てけぇ!」
はにわは、お役立ち人形にそう言ってしまった。お役立ち人形は、腹を立てて、その場の勢いでそのまま外に出ていってしまった。
「ふん!別に、お役立ち人形がいなくったって!」
はにわは、強がってみせ、出て行くお役立ち人形にわざと背中を向けて知らん振りをしていた。
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寒い冬空の中、ただただ歩きながら、お役立ち人形はつぶやいた。
「あーぁ、ついついその場の雰囲気で出てきちゃったけど・・・。寒いからどこか暖かいところで暖を取りたいなぁ。それに、おなかもすいたなぁ。でも、お金が・・・。あ、ポケットにちょうど100円入ってた。でも100円じゃ、おにぎり1個食べたらおしまいかぁ。あ!そうだ!」
目の前にちょうどパチンコやのネオンを見つけた。
「いつものように、稼げばいいんだ!」
お役立ち人形は吸い込まれるように100円玉を握りしめて店内に入っていった。
運の良いお役立ち人形のこと、その100円であっという間にフィーバー!いつのまにかドル箱を積んでしまい、すっかりフトコロがあったかくなった。
稼いだお金で屋台のおでんやにいった。このおでんやは、はにわとパチンコの後にいつも立ち寄り、勝ったら祝賀会、負けたら反省会をしていた屋台だった。
「あれ、今日はひとりかい?珍しいね。」
おでんやの主人は不思議に思いながらも、あえてお役立ち人形にそのわけを聞かず、大好きな卵と大根をお役立ち人形にそっと出した。
おでんでおなかもいっぱいで体もあったまり、お役立ち人形は一時的にほっとしたのだった。
「あぁ、寒いなぁ。冬の寒さはこたえるなぁ。」
ちょうど閉店間際の衣料品屋の前を通りがかり、暖かそうな青色のマフラーを見つけ、買った。
「マフラーをするだけであったかいなぁ。しかし、今晩寝るところはどうしよう・・・。この寒空じゃ、外にずぅっといたら凍えちゃうしなぁ。ええっと、今いくら持ってるんだっけ。」
お役立ち人形は、所持金を数えた。ビジネスホテルに泊まれるだけのお金は十分に稼いでいたのだった。
ギャンブル運のいいお役立ち人形は、こうやってパチンコや競馬で生活費を稼ぎ、安いビジネスホテルで寝泊まりをしながら生活することに金銭的な苦労は全くなかった。しかし、心の中はいつも満たされていなかった。
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今ごろ、はにわは、どうしているのだろう。 きっと、負けてばかりでむしゃくしゃして、愚痴を聞いてくれる自分を必要にしているに違いない。 お役立ち人形は、いつもはにわのことが気になってしょうがなかった。そう思いながら、はにわの行き付けのパチンコやを覗いた。
はにわは、一人でパチンコを打っていた。 別に、お役立ち人形なんかいなくたって、と思っていた瞬間!大当たりした。 おおおお!と思っているうちに、どんどん大当たりは続く。 はにわは、久々にパチンコに勝っていて、ドル箱をいっぱい積み、満足だった。
その様子を、お役立ち人形は寂しそうに窓の外から見ていた。 はにわはお役立ち人形に気づかずに、となりの席のおやぢたちと談笑している。 |
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何気なく、はにわが外を見た。 はにわの視界には、寂しそうに見ているお役立ち人形の姿を見つけ、どきっとしたが、お役立ち人形は急いで背中を向けて走り去っていった。
はにわは、その後ろ姿に引き付けられたが、でも、見たこともない真新しい青色のマフラーをしてたし、頬もこけてないし、お金にも困らずにちゃんと生活してるんだな、とほっとしながら、お役立ち人形なんて居なくたっていいさ、と、意地を張った。
はにわは、やっと運が向いてきて、パチンコで今までの負け分を取り返しても、なんだか心が寒かった。
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複雑な心境で帰宅の途につくと、後ろから、お役立ち人形の気配を感じた。
「なんだよ、どうせ、パチプロにでもなって、悠々自適な生活してるんだろ?」
はにわは、後ろを振り返って、お役立ち人形に言った。お役立ち人形はむっとして、寒空の中に走って去っていった。
「ふん、調子にのりやがって。」
はにわは、そう思いながら、家の中へ入っていった。
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お役立ち人形は、やけになって、屋台のおでんやに行き、おでんを食べて憂さ晴らしをしながら、おでんやの主人にぐちった。
「ぼくの運がいいのは不可抗力なのに、こんな目にあうなんて、おぢさん、どう思う?」
お役立ち人形は半泣きになりながら、おでんやの主人にぐちった。
「まぁ、意地の張り合いしたって、何も解決しないよ。もっと物事を素直に考えないとね。」
お役立ち人形はその主人の言葉にはっとし、目に熱いものがこみ上げてきた。
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深夜、ふと気になって、はにわは、家の外を見てみた。 すると、そこには、寒空の中に寂しそうに立ちすくむお役立ち人形を見つけた。お役立ち人形は、手に画用紙とペンを手にもっていた。お役立ち人形は、はにわの視線に気付き、おもむろに字を書き始めた。
「お役立ち人形・あなたのお役に立ちます。定価2000円。」
そう書くと、紙をひらひらさせて、はにわに見せた。 はにわは、びっくりしたと同時に、じーんとして、目から涙があふれてきた。
「ふん、今、パチンコで潤っているから、買ってやるか。」
偉そうな態度で、お役立ち人形に2000円渡し、お役立ち人形を家の中に入れた。 ギャンブルで稼げるお役立ち人形にとって、2000円なんてはした金にすぎなかったが、その2000円が宝物のように思え、きれいに伸ばしてノートにはさんで自分用の引き出しに大切に保存した。
そして、彼らは暖かい家の中で、以前のように仲良くテレビを見、ご飯を食べ、歌を歌って楽しんだ。
ちょっとほろりとくる冬の出来事だった。 |