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  メンテナンス

はにわは新聞の折り込み広告を見た。
なになに、「お役立ち人形をきちんとメンテナンスしてますか?」だって?
お役立ち人形は人形なので、時が立てば汚れたり、ねじがゆるんだり、いろいろと不都合がでてくるもの、定期的にメンテナンスをしましょう。今なら、特別価格1万円からメンテナンスを承ります。なお、メンテナンスには3日を要します。
メンテナンス料金は、1万円、2万円、3万円コースの3種類。

ふぅん、メンテナンスかぁ。そういえば、うちのお役立ち人形、最近ちょっと薄汚れてきたし、掃除をお願いしていても、目を放すとトイレでたばこを吸ってさぼってたり、とか、よくあるんだよね。やっぱり、ちゃんとメンテナンスをしてないのがいけないのかな。
しかし、いったい何をするんだろう。人間ドッグみたいに、バリウム飲まされたりいろいろ調べられるのかなぁ。あ、でも、人形だから、部品ごとにばらばらに分解するのかな。そう思うと、お役立ち人形がちょっと可哀想な気がするなぁ。でも、やっぱりメンテナンスした方がいいよね。
はにわはそう思って、お菓子を食べながら寝そべってテレビを見ているお役立ち人形をちらっと見て、早速メンテナンスの申し込みをすることにした。

ええっと、しかし、このメンテナンス料金が3種類あるけど、なにが違うんだろ?ま、いっか。とりあえず、一番安い1万円コースで。
はにわは役立ち人形を、最寄りのメンテナンス取扱い店へ持っていき、代金1万円を払い、そそくさと家に帰っていった。
お役立ち人形は、なにがなんだかよくわからなかったが、とにかく綺麗にしてもらえるんだな、というのだけはわかった。
ふぅ、3日間お役立ち人形がいないのは寂しいけど、仕方あるまい。はにわはそう自分にいいきかせて、お役立ち人形を見送った。

お役立ち人形は講堂に集められた。はにわのお役立ち人形のまわりには、ずらっと大勢のお役立ち人形がいた。
「おれさ、3万円コースなんだ。いいだろ。」
「えええ、いいなぁ。わたしなんか、2万円だよ。」
「きみは?」
はにわのお役立ち人形は隣りにいたお役立ち人形にきかれ、どぎまぎした。
「1万円コースだけど。」
「ふぅん、1万円かぁ。でも、最近1万円でも、昔にくらべるとだいぶ質があがったみたいだけど。」
え?なんの質?メンテナンスの質にそんなに差があるのかなぁ?
なんだか、よくわからなかったが、まわりのお役立ち人形は、まるで遠足にいくかのようにウキウキしていた。最近、なんだか変化のない毎日にうんざりしていたはにわのお役立ち人形も、なんだかウキウキしてきて、うれしかった。

そして、お役立ち人形たちは、1万、2万、3万コースごとに分類され、バスにつめられて運ばれていった。

「やぁ、きみも1万円コースなんだね。ぼくは、1万円コースはこれで3回目なんだ。きみはどう?全く、一度くらい3万コースを体験したいよね。そうそう、きみ、どういうところに住んでるの?ぼくは、小さい子供のいる家庭にいるんだ。」
たまたま隣の席に座ったお役立ち人形に話し掛けられ、友達になった。
1万円コースと3万円コースがなにが違うのがわからなかったが、とにかく、楽しく談笑し、楽しい時間を過ごした。

バスは山の中に入り、しばらくすると、古びた旅館の前に止まった。
「あ、ついた、ついた。あいかわらず、しけた旅館だなぁ。でも、料理はまぁまぁうまいんだけどね。なんてゆーか、家庭的な味ってゆーか。」
お役立ち人形たちは、古めかしい地味な旅館の中にはいり、まずは何の細工もない素朴な温泉にはいった。お役立ち人形たちは、嬉しそうに、のんびりとお湯につかった。

「ふぅ、やっぱり、温泉は落ち着くねぇ。」
最近、ちょっとだらけ気味だったはにわのお役立ち人形はすっかりリフレッシュしていた。
「まぁ、地味な温泉だけど、リラックスできるよね。やっぱり、たまには温泉だな。」
はにわのお役立ち人形は、幸せだった。
そして、次は食事がでた。素朴な地元料理だったが、なかなかうまかった。はにわのお役立ち人形は、お肌もつるつるで大満足だった。
夜は夜で、お役立ち人形だちはビールを飲んだり、みんなで童心に帰って枕なげをして楽しんだ。

3日にわたり、お役立ち人形は楽しい時を過ごした。
「でもさ、」
となりのお役立ち人形が、はにわのお役立ち人形に話しはじめた。
「今ごろ、3万円コースは、豪華なジャグジー付きの温泉につかって、豪華にステーキなんか、食べてるんだよね。うらやましいなぁ。夜はカジノもあるんだって。いいなぁ、ゴージャス!」
はにわのお役立ち人形は、値段の設定の違いがやっと飲み込めた。
そうか、3万円だったら、そんな豪華なんだぁ...。いいなぁ....。一度くらい、そんな体験をしてみたいなぁ。

お役立ち人形は3日間のリフレッシュを終え、戻ってきた。
はにわは、肌もつやつやですっかりリフレッシュしてさわやかなお役立ち人形を見て、とても嬉しかった。やっぱり、メンテナンスは必要なんだな、としみじみ思った。

そして、お役立ち人形は、いつか、3万円のコースをおねだりしようと、一生懸命はにわに尽くすのだった。