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  便利冷蔵庫・トリの場合

トリの家の冷蔵庫が、最近どうも騒音がうるさい。 友人が結婚する時にタダでもらったお古だから文句もいえないけれど、しかし、夜中、冷蔵庫の音に気づいて、目がさめるくらい、うるさくてしょうがない。

トリは、いい加減いやになったので、冷蔵庫を買いに電気やに出かけた。 そこで、「便利冷蔵庫」という、なにやら怪しい冷蔵庫を見つけた。

ふぅん、なんだか、うさんくさいぐらい、便利そうな冷蔵庫だなぁ。
毎晩遅く帰ってきて、コンビニに寄って弁当を買うとい生活パターンにも飽き飽きしていたし、この冷蔵庫があれば、食生活もいろいろ潤いそうだなぁ。
トリはそう思って、便利冷蔵庫を買い、数日後、家に配送されてきた。

まずは手始めに、「とんかつ」を頼んでみた。 冷蔵庫のドアのボードに、「とんかつ」とかいて、OKボタンを押すと、 エラーメッセージが出た。
「なに?認識できません、だと?そっか、字が汚いから、認識しそこねやがったのか。 気にいらねぇなぁ。まぁ、今時の社会人は、字の汚さより、キ ーボードを叩く正確さが求められるんだしな。そうだ、よく休日に食べにいくトントンやのとんかつ定食っていう指定もできるのかな?」
トリは、一人でぶつぶつ言いながら、トントンやのとんかつ定食と、一字一字丁寧に書いてOKボタンを押した。
数分して、ドアの脇にあったランプが点滅した。
「をっと、届いたのかな?」
トリはドアをあけると、冷蔵庫の中には、冷えたトントンやのとんかつ定食が入っていた。
「そうか、できたてがくると思ってたけど、冷蔵庫に入ってくるようなものだったら、冷たくなっててもしょーがないか。」
トリはしょうがないな、と思いながら、電子レンジでとんかつを温めて食べた。
「うん、コンビニ弁当よりは断然うまい。やっぱりトントンやのトンカツ定食は、レンジであっためてもうまいなぁ。」
トリはなかなか御満悦で、毎日のように、便利冷蔵庫を使った。
ある日のことだった。またいつものように、残業で遅く帰ってきた。
けっ、部下にばかり仕事を押し付けて、上司は今ごろ寝てるんだろなぁ、 などと、ぶつぶつ思いながら、便利冷蔵庫に夜食を注文しようとした。
何にしよう?と悩み、そうだ、お寿司が食べたいな、と思い、注文しようとした。
いやまてよ、どうせだったら、ウニとか、トロとかも食べたいな。これだけ働いてるんだから、自分へのご褒美だ、やっぱり上寿司だな、と思って便利冷蔵庫のボードに書こうとしたが、どうも、寿司の「寿」の字が字の雰囲気は浮かぶのだが、ド忘れして思い出せない。
ま、いいや、適当にごまかしてかいとこ、と思ってかいてみたら、何やら認識されたようだった。

いつものごとく、数分後、ランプが光り、冷蔵庫のドアを開けた。 トリは、ウニやトロにわくわくしながら、冷蔵庫を開けると、しかし、そこには・・・。
冷蔵庫の寒さに小刻みに震えながら、寝ぼけまなこの上司がいたのだった!!
文字認識は、ごまかして書いた「寿」の字を、解読不可能として、省略して認識しやがった! 誰だ!こんなシステムを作りやがったのは!
トリは焦って、急いでドアをしめ、返品ボタンを押した。

翌日、会社にいくと、上司は鼻をぐすぐすしていた。
「きのう、寝ている時に、急に冷蔵庫にいるように冷え込んでびっくりしたよ。異常気象なのかねぇ?」
トリが焦った。
「そ、そ、そうですね。地球は温暖化するのか、冷却化するのか、よくわか らないで
すね。」
と、適当なことを抜かして、トリは仕事が忙しいふりをして、 鼻水をすする上司を必死で振り切ったのだった。