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  空き缶

トリは今日も残業である。
ちっくしょう、なんでこんなに働かなきゃいけないんだ!
その上、上司にはさんざん嫌みをいわれるし、やっとれんぞ!と、
文句をいいながら、帰りの電車に乗り込んだ。
そこで、ごろごろと車内を転がる空缶を見つけた。
けっ、邪魔な空缶だな。別にこっちに来ないからいいけど、
目障りだな、と思って、空缶を見ていた。

さて、その空缶の様子を、ちょっと見てみよう。

ぼくは、空缶だ。
どっかのにーちゃんが、電車の中にそのまま置いていった空缶。
最初は、じっと立っていたけど、急ブレーキでバランスを失い、
加速や減速のたびにコロコロと転がる空缶。
ぼくが今いる電車は、仕事に疲れて眠りこけるサラリーマンを
いっぱいのせた、夜の電車だ。
ごろごろ転がりぶつかる先は、おやぢの足元。
くっせぇー!と思い、次の加速を利用して、
わざとギャルの足元へころがり、くっつこうとすると、
ささ!とギャルに交わされ、もっと先へと転がってしまった。

すると、ちょうど降りようとしたにーちゃんに見事に踏まれる。
「あっぶねぇなぁ!」

ぼくの体を踏んでおきながら、謝るどころか、怒ってくる・・・。
いててて、踏まれたせいで、体の一部がへこんでしまった。

ちょっと体がへこんだせいで、さっきほど、転がりにくくなったけど、
でも、乗降客は、止まっているぼくを踏みそうになっては、
文句をいって、蹴っていく。
じっとしてるんだから、ちゃんと避けてってよ!
ぼくの体は、だんだんぼこぼこになっていく。
あーぁ、早く終点にならないかなぁ。
空缶は、踏まれても蹴られても、ただじっと耐えるしかなかった。

終点についた。空缶はやっと終わったか、と思った。
あとは、車掌さんに拾ってもらえるだろう。
と思っていた矢先、ちょうど降りようとしていたトリは、空缶に目がいった。
さっきまで、ごろごろしてうっとおしかった空缶も、哀れな姿だな。
そう思いながら、トリは思いっきり空缶を踏みつけ、気持ちよく去っていった。

空缶は思いっきり潰されて、泣きながら思った。
ストレスの溜まったサラリーマンは嫌いだ、と。