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  無料カーナビ
「やっぱり、週末はドライブして、きれいな空気を吸いにいくのがいいよな。このままだとストレスたまりまくってノイローゼになっちまう。」
トリは今度のボーナスを機に、車を買うことにした
「カーナビねぇ。いまどき、カーナビのってるのが普通かねぇ?自分で地図を見るのがめんどくさいやつが、楽するための道楽品だろ。方向音痴のやつがカーナ ビなんか使ったら、ますます方向音痴になるだけだし、文明っちゅーのは馬鹿を生み出す罪作りなやつだぜ。」
トリは車を買ってすっからかんになった自分の懐の寒さを見ながら、自分を正当化していた。
そのとき、トリの目についたは、「無料」という文字だった。
「・・・カーナビが無料?」
トリはその文字をみたとたん、カーナビ方向音痴量産説を即座に否定した。

無料でカーナビはいかが?
このカーナビには宣伝がついていますが、あなたのドライブを楽しくします。


「なるほど、宣伝付きカーナビかぁ。どうせ広告料で儲けてるんだな。ま、どうせ画面に広告が出たりするくらいだろ。
おっと、いけねぇ、今晩昔の友達との飲み会があるんだった。とっとと申し込んでいこうっと。」
トリは、無料カーナビの説明をよく読まず、タダだからいいや感覚でとっとと契約を済ませておいた。
1週間後、無料カーナビのついた車が納車された。
「おぉぉぉ、マイカーだ。これが自分の新しい居場所になるんだな。」
トリは浮かれ気分だった。
「じゃ、まずは、その辺をひとっぱしりと。」
トリは、すいすいと車を運転した。
「そうだ、せっかくカーナビがついているんだから、全然知らないところにいってみたいな。えっと、セットするには、こーして、あーして・・・」
トリは、家から数十キロは離れているだろう一度もいったことのない大きな公園を指定し、カーナビの案内を開始させた。
「公園で森林浴かぁ。きれいな空気をすいまくってくるか。」
トリはカーナビの指示に従ってスタートし始めた。

500メートル先を右折です。

「ほいほーい。みぎみぎみぎっと。」

400メートル先を左折し、すぐに右折です。

「ほいほーい。左行って右ね。」 トリはカーナビにいちいち返事をしながら、運転を楽しんだ。

トリは30分くらい走ると、ふと気づいた。
「そういえば、無料カーナビなのに、広告全然出てないよなぁ。画面の下の方にひたすら広告出してるのかと思ってたんだが。」
トリは無料なのに、企業としてどう利益をあげているんだろう?と、不思議だった。
「ま、いっか。オレとしちゃぁ、無料なんだから。」
左 500メートル前方、ハンバーガーが美味しいハニーバーガーがあります。
今なら、ドリンクオール100円均一実施中です。

「ん?ちょうど腹へったから食っていこうかな。」
トリはハニーバーガーの駐車場の中へと入っていった。

「うめーうめー。宣伝っちゅーのは、店の宣伝をするってことなんだな。ま、これくらいだったらいいよな。このカーナビがなかったら、このハニーバーガーを食うこともなかったしな。」
トリはハンバーガーを食べながら、満足気だった。
「さてと、スタートするか。」

カーナビの指示に従いながら運転し、1時間くらい走っただろうか。

300M先を右折、そして、700m先をさらに右折です。

「ん?右折して右折?なんかもどってねぇか?交通規制でもあるのかね。」
トリは怪訝に思いながらも、カーナビの言うとおりに2回右折した。

しばらく直線をひた走りしていると、カーナビが話し始める。

左前方、なんでもそろう百貨店があります。500M先を左折してください。

「なんでもそろう百貨店?ふぅん。」
トリはカーナビのガイドを聞きながら、ふんふんと思った。

まもなく左折です。

「ん?すぐを左折ね。」
ぴこんぴこんと左に方向指示器を点滅させ、左折準備体制にはいった。

すぐを左折してください。
「ん?道なんかねぇぞ。でも、ここっていってる小さい道があるのかな。」
トリはもう左折する寸前で気づいた。
「百貨店の駐車場じゃねぇか?」
気づいたときには駐車場の料金ゲートの前で、駐車場待ちの後続車もついてしまい、やめにくい状況だった。

「けっ、むかつく!」
むかつきながら駐車券を取り、百貨店の駐車場にはいってしまった。
「30分200円か・・。そのまま出ると200円の出費、2000円で90分無料か・・・。」
トリはがっくりし、カーナビをうらめしそうに見つめた。
「くっそぉ、カーナビって、広告場所に案内するってことか!」
2000円の買い物をして百貨店に利益をあげさせるのが腹立たしかったので、店内にはいってトイレを借り、絶対に30分以上滞在しないように店内をちょっとだけぶらぶら歩き、200円払ってトリは駐車場から出た。

ツギの道でUターンしてください。

「くっそぉ!百貨店に寄り道するために遠回りしやがったな!」
トリはむかついた。

2キロほど直線です。

「くっそぉ、おまえの指示になんか従いたくねぇ!」
トリはむかむかしていた。
「・・・ でも、今どこにいるのかわかんねぇぞ。カーナビがあると思って、地図もなんにももってねぇし。」
ますますむかつきながらトリはしぶしぶ運転した。

それから30分くらいたっただろうか。

左前方に大型ゲームセンターJOYがあります。500M先を左折してください。

「おい、ゲーセンに誘導してねーか?オレは公園できれいな空気を吸いたいんだ。薄汚れたゲーセンの空気なんかいらん!」

すぐを左折です。

「いやだ!絶対にいかないぞ!ゲーセンなんかには!」

トリは無視して、ゲーセンの前をとおりすぎた。

ツギの道を左折し、200m先を左折、その先300m先を左折、その先200m先を右折してください。

「左折して、左折して左折だとぉ?おまえ、ゲーセンに戻ろうとしてるな!」

トリはふりきって曲がらずに直進した。

ツギの道を左折し・・・・

「ええい!うるさい!」
トリは、むかついた。


しかし、自分がいったいどこを走っているのか全く検討がつかず、とんでもない方向に走っているんじゃないかとふと不安になった。

「そうだ、いったんゲーセンにいって、ちょっと止めてはいったフリして出てくるか。オレも結構頭いいな。」
トリは、カーナビに指示どおりに左折左折左折右折し、ゲーセンの駐車場にはいった。

「お、ここの駐車場はタダか。よかったぜ。」
駐車場に車を停めて、降りずにそのまま数分運転席に座っていた。

「さてといくか。ばーか、おまえの手にはのらねーんだよ!」
トリはカーナビに悪態を付き、カーナビのツギの指示をまった。 ・・・・・。
「ん?なんでなんにもいわないんだ?」
案内ボタンを押してみた。

まだ今きたばかりです。遊んでいってください。

「くっそぉ!おまえ、時間まではかってやがるのか!」
トリは負けを認めざるを得なかった。
「そうだ!オレ、ゲーセンのコインゲーム得意なんだよな。100円で長居してやる!」
トリは車から降りてゲーセンの中に入り、100円玉をコインに両替した。

競馬ゲーム、スロット、コイン落とし・・・などなど、じわじわとコインの数を増やし、はっと気づいたら100円で2時間も遊んでいた。
「けけけ、どんなもんだい。利益はたったの100円だぜ。光熱費とか人件費とか考えると、赤字だろ?けけけ!」
トリはすごく満足だった。

ゲーセンから出てきたときにはすっかり日がくれていた。
「オレ、今どこにいるんだろう?」
近くを通りかかったおっちゃんに自分の家はどっち方向かを尋ねた。
「あぁ、その大通りを出てまっすぐいって、高架のところを左だよ。そうだなぁ。車だったら30分もあればつくんじゃないかなぁ。」
・・・30分!?オレは寄り道しながらもずいぶん長いこと運転したぞ。
トリはますます腹たった。

「ってゆーか、おまえ、目的地と逆方向の店までつれてくなよ!」
トリは腹立たしかった。
ナビをつけっぱなしにしながら、トリはおっちゃんに言われたとおりに自宅へ運転した。

次、右折です。

「けっ!それじゃ家につかねーだろ!左折だっちゅーの!ばーか!それくらいこっちは知ってんだ!」
トリはカーナビに悪態ついてストレス発散しながら、あっという間に家に着いた。

・・・あなたも無料カーナビ、欲しいですか?楽しいドライブができるかも。